日常76 祖母と誕生日
祖母、祝誕生日。
89歳になった。
まだ、90歳ではない。
今月は、デイサービスでもお祝いをしていただき、とても嬉しそうだった祖母。
母が(祖母にとっては嫁)が間違えて、98歳でしたっけ?なんて言っちゃって。
祖母は笑いながら否定していたけれど、内心結構イラついていたのがわかってヒヤヒヤした孫。
この1ヶ月、孫は悩みに悩んでいた。
初めて一緒に住んでいて迎える誕生日。
さて、プレゼントどうしようか、と。
なんどもここで弱音を吐いているように、孫が買ってきた土産は結構な割合で完敗している。
誕生日、しかも80代最後のお祝い。
昔だったら、卒寿のお祝い。
去年忙しかったのを言い訳に傘寿のお祝いをすっぽかしている。
などなど、孫の頭はプレゼントに悩まされていた。
ただ、候補はちゃんとあった。
それも悩み始めてすぐに、職場のお姉さんからのアドバイス。
(職場のお姉さま方からのアドバイス、毎回すごい有難い)
「布団乾燥機があったら、これからの季節全然違うよ」
お姉さんの一言に即決した。
腰が曲がっているにも関わらず、祖母布団を結構まめに干す。
転けたら大変だから、最初こそ孫がやるやる言っていたが。
本当にうちの祖母は自分のことは自分でやりたい人なのだ。
手伝おうものなら本当に威嚇される。
なので、いつ転けても(転けちゃいかんが)対応できるように、でも見張ってるみたいだと居心地悪いから台所でケータイいじるふりして見守る。
そんな場面が何度かあったので、これは即プレゼントとして確定。
ただ、問題は、これが「機械」だということ。
祖母、多分使い勝手がわかなくて、あんまり喜ばないだろうなあ…
というのが、決定と同時に想像できるくらいには、孫も学習した。
布団乾燥機は、孫が安心したいから購入するので、プレゼントとはちょっと意味合いが違ってきそうな気がする。
そこで、孫、予備を用意することにした。
本命は布団乾燥機。
でも、しょぼんとなった祖母にもう一つ「お気持ち」的なプレゼントを送って、気分だけでもプレゼントをもらった感を味わってもらおう作戦。
そしてここからが孫の頭を悩ました…
流石に歳が歳なので、物はいらないと常日頃話す。
化粧とか服は好みがあるだろうから、まだそれはちょっとレベルが高すぎる…
食べ物にしても、多分美味しいものを誰かと一緒に食べる方が好きな人だ。
背中当てのクッションを探そうにも、なかなか思うものが見つからない。
孫が唯一知っている、祖母の好きなものは、「花」と「ピンク」。
このキーワードで探しまくった結果、予備に選んだのはブランケット。
完璧な作戦だ!と思い込んでいざ当日。
布団乾燥機は、まあ思った通りの反応。
嬉しいと言いつつ目が笑わない。
そしてすかさず出す予備のブランケット。
デイサービスで使わせてもらっていて欲しかったんだと笑ってくれる。
よしよし、ここまでは孫の予想通り。
「夜、早速布団乾燥機使ってみようね」
なんて言って孫、出勤準備をしていたら……
なんと、このババア布団を干し始めていた。
何やっとんねん、と思わず出てきそうな言葉を飲み込み、台所から傍観。
布団乾燥機、あげたやん!!!さっき!!!!!
孫のツッコミは孫の心の中だけに響き渡る。
もちろん、「布団が乾燥・ダニ防止までできる上に、洗濯物まで乾かせて、布団があったかくなるんだぞ」と説明済みである。
にも関わらず、である。
まがった腰で、一生懸命布団を運ぶ姿は、なんだか亀のようだった。
さすがにもうツッコミとかどうでもよくなるくらいの見た目だったので、敷布団を手伝うふりしてさりげなーく聞く孫。
「ねえねえ、布団乾燥機使わんの?」
「使うんは夜じゃろ?せっかく晴れたから布団を、そろそろお日様に当てよう思いよったんよ」
もともと、布団を干したかった祖母。
そこに、孫が「布団」「乾燥」「ダニ」の布団を干そうねキーワードを連発するものだから
「布団を干さねばなるめえ」と、祖母の脳内では変換されていた模様。
…ある意味、以心伝心?
孫の予想を斜め上いく祖母の行動に、孫笑うしかない。
一応、ちゃんと布団乾燥機誕生日の夜に使ってきたところ。
とりあえず、送ったものの存在は認識してくれているからよしとしよう。
どうせ、孫が送りたかっただけの代物。
喜んでくれたら、こっちが感謝、くらいの気持ちでもいいのかもしれない。
ブランケットは多分喜んでくれている。
それにしても、ブランケット買っといて本当によかった…
使用した感想は、明日の朝聞こう。
多分、なんの感想もないだろうなあ…
「おばば、お誕生日おめでとう」