日常72 祖母とチンゲン菜
畑の一角に、必ず祖母が植えているのが、菜っ葉たち。
「きすい」ものが食べにくくなっている祖母。
「きすい」とは、嚙みちぎりにくいというニュアンスらしいが、
祖母はたとえで「ガムみたいな」という。
ガムがそもそも噛みちぎるものではないという認識である孫。
いまだに祖母のいう「きすい」類いの野菜がわからなくて時々失敗している。
まあ、失敗を全部数えていたら本当にキリがない。
そんな祖母曰く、スーパーで買ってくる菜っ葉類は「きすい」のだそう。
だから菜っ葉は基本家にあるもの。
これが、孫にとっては衝撃のうまさだった。
「きすい」とか関係なく、柔らかくって美味しいのなんのって。
チンゲン菜だって、サラダとして食べている。
スーパーじゃないから自然の中にある、なんて言うとだいぶ語弊がある。
もちろん、祖母が種から育てているから、ちゃんと土は耕して、育ちやすい環境を作ってやる。
種だって、育ちやすいように種を取るために作ったもの(ここ、孫初めて知ってびっくり)を買ってくる。
ただ、土に根っこを生やしているそれらを、引っこ抜いて水で泥をザバザバ流して、
時々そのまま口へ放り込んでつまみ食いしちゃうと、
「生」って感じが口の中でぱんっと弾けるような味がする。
身体で、うまいと感じてる。
頭でうまいと認識するより、ずっと早く、ずっとしっかりと。
身体にいいものって一言では言えないくらい、ありがたいことにこの世にはたくさんある。
孫より頭のいい人たちが、お金を持っている人たちが、一生懸命考えて作ってくれたものがちゃんとこの世にはある。
今のところ、祖母が作った菜っ葉が孫にとっては一番「身体にいいもの」という感じがする。