日常64 祖母と「おはち」
仏壇や神棚へのお供えものを、この地域では「おはち」という。
祖母の家は、里山とはいえ中国地方だからか、湿気がすごい。
なので、気をぬくとすぐカビる。
「おはち」も例にもれず。
でも、時々そのカビがなんだかとてもかわいく広がる。
ちらし寿司のような、ふりかけでもかけているような、そんな見た目。
だから時々、本当に時々びっくりする。
ふわふわした毛があるから、食べちゃいけないのがわかるけど、なんだか間違って口にしてしまいそうで怖い。
「おばばー、これカビわいちょるよー」
「ありゃま、ほんまじゃ、捨てといて」
仏壇に供えることを、「持っていく」とか「置いてくる」とかいうと祖母は怒るけど、カビがわいたら素直に「捨てて」いいのかと、そんなところで感心しちゃった孫だった。