日常63 祖母と台所
4月、祖母の家に引っ越してすぐ、祖母に台所を自由にしていいと言われ、
出されっぱなしの道具類を片っ端から片付けていた。
でも、それが実は結構高齢者には良くなかったみたいで。
9月、祖母の家に引っ越しして半年経って、
孫、道具をそのまま同じように再び出してようやく並べ切った。
生活の変化っていうのが、高齢者の認知に良くないらしい、というのに気付いたのは8月ごろ。
そして、祖母が今までしていた生活に戻すのに約1ヶ月。
台所は、腰の曲がった祖母にとって、完璧な導線が作られていたことに最近ようやく気付いた。
大きくて、でも軽いボウルは流しの向こう。
ほんの一瞬腰をまっすぐすればいいから。
時々使うフライパンは、レンジの隣の窓際。
柄がついてるから、多少遠くても届く。
よく使うヤカンは、コンロの隣に二つ。
お茶用とお湯用だ。
調味料入れがあるけれど、油と醤油は必ずシルクの台の上。
調味料入れのふたを開けるのがめんどくさいのと、ほんのすこし高いから。
そうやってすこしずつ、祖母の導線をなぞって、物を出して置いてゆく。
雑多だけれど、これが一番使いやすい祖母の台所。
台所に立っている時間は、孫の方が長いけれど、新参者なので年長者に倣え右である。