おばばと暮らせば

瀬戸内海海域の中山間部に住む、90歳のおばばと孫の暮らし。おばばの言葉や思い出が面白すぎたので記録取っていくことにしました。

日常19 おばばの方言教室 

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ある日の夕方の田んぼ



 

「あんたは、言葉を知らんねえ」

祖母はよくそういう。

腹が立つというよりも、正直楽しくて仕方がない。

 

そういうときは大体、私の知らない方言が出てくるときだから。

 

その日は、大量の固く育ちすぎたレタスをどう処理しようかと悩んだ挙句に、スープにしてみた。

言い訳じゃないけど、私は料理が苦手だ。

上手にはできない。

なのに、理科の実験みたいで飽きはしないから、大体一緒に食べる人が犠牲者になる。

大体、6割あたり、4割はずれくらいの確率である。

料理下手な人間は挑戦したがるというけれど、もれなく私もその類。

 

レタスがもったいなくて、じゃがいもと一緒にミキサーに入れて混ぜてみたけど、途中でミキサーが壊れてしまって、中途半端な葉っぱ感が残ってしまった。

 

素直な祖母は失敗したとき、本当に食べない。

口に合わなかったら、一口で終わり。

味はいいけど葉っぱの感じが嫌、とのこと。

 

祖母に似たのか素直な私。

「出されたもんはちゃんと食え!」

と言って一口。…うーん、食べられない。

 

なにが敗因なんだーと喚いて嘆いている私に祖母が一言。

 

 

「業(ごう)をいって、作ったのにねえ」

 

 

全然意味がわからない言葉というのは、ちゃんと聞き取るのさえままならない。

英語と一緒。なんて言ったのかもう一度聞いて、そして冒頭に至る。

 

 

 

わからないものはわからない。

祖母はさすがにすぐに説明できないので、そういうとき、大体ネットで調べちゃう。

 

そうすると、大抵広島弁サイトがヒットする。

しかも事例が、映画『仁義なき戦い』だったりする。

 

こんな広島の端っこでも、仁義なき祖母と孫の戦いが勃発。

 

「ばぁば、これはわからんよ、広島弁のキツイやつじゃん」

「そがぁなことなぁよ、日本語じゃ」

「日本語は日本語でも、これ広島の昔の言葉よ」

 

 

仁義なき祖母と孫の戦いは置いといて。

「業をいる」これの意味ですが、

「苦労する」とか「頑張って」などの意味があるそう。

 

ちなみに、祖母から出てきた事例がこちら。

「業いりなんは大義じゃっち言うじゃろ」

言わんわ、と即座にツッコミましたが、バリバリの広島弁ですね。

この場合は「手がかかるのは大変だ」という意味で使われているよう。

 

一生懸命作ったレタススープ、とりあえず残りのジャガイモはポタージュにする予定。

レタスは新しい種を植えることに。

今日の方言は一応下手な私の料理をいたわってくれた一言だったよう。

 

農家の食卓ってキラキラした手作りのものが広がっているイメージ。

現実は料理嫌いな私が作るので何もキラキラしとりません。残念すぎる。

 

それでも、飽きることなく料理してるのは、なんやかんやで祖母は食べてくれるから。

美味しくないものは食べないよ。

美味しくできたものは食べてくれる。

 

明日は何を作ろうかなーと、のん気に失敗を繰り返してますが。

 

「かぼちゃのスープがうまかったけ、それにしんちゃい」

 

そういうリクエストも時々あるから、まあ失敗は成功の元ということで。

 

 

※後日、職場でこの話をしたところ、現役の広島弁でした。私の広島弁はまだまだ甘い方のようです。