日常51 祖母と方言教室 その2
「孫、ちょっと見んさい、ほれ、背ぇがね、ノッたんよ」
朝起きて早々、挨拶もせず開口一番の祖母。
3日間ぐらい続けてこの報告が続いたので、相当嬉しかったんだろう。
九十度、もしくはそれ以上に曲がった腰を伸ばして向き合う。
手は太ももに当てて、必死な感じだけれど、それでも祖母の目線が孫と同じになる。
「ノッた」という言葉は、教えてもらったわけではないので、
ニュアンスしか伝えられないのだが
「反る」と言った、曲がっているものが反対へ向くようなイメージ。
祖母のこの言葉を、「反らす」と表現するとすこし意味が異なる気がする…
曲がった腰が、まっすぐになった、という意味が一番なのだけれど
それは標準語の「背を反らす」ではちょっとニュアンスが違う。
なんというか、「元に戻した」というのがしっくりくるかもしれない。
よくわからないけれど、祖母はいつも「背がノッた」と繰り返して喜んでいる。
ちなみに、「ノッた」の「ノ」の部分にアクセントがつく。
実はこの言葉が方言だと認識したのは数時間前。
漢字でどう書くのかしらと、一瞬考え、全然思いつかなかったのがきっかけ。
背を伸ばして手を振る友人が羨ましいらしい。
このモチベーションのまま頑張ってもらいたいものである。
すこしずつ、歩くのが難しそうになっている。
今がチャンスかな? と思って、図書館で大量に高齢者向けのストレッチ本を借りてみた。
本日四度目の背中の報告。
何度だって、まるで初めて聞きましたという体で聞くからさ。
だからこのまま頑張って。