おばばと暮らせば

瀬戸内海海域の中山間部に住む、90歳のおばばと孫の暮らし。おばばの言葉や思い出が面白すぎたので記録取っていくことにしました。

日常49 祖母と台風

 

 

お盆前から「台風くるぞ」と警戒しまくった。

水を買って、予想される台風上陸日までに全部の予定を終わらせて。

いざ、家に待機。

 

祖母と暮らし始めて、「高齢者優先避難」という言葉を初めて聞いた。

多分また発令されるんじゃなかろうかと警戒してのことだった。

 

 

 

 

なぜか晴れていた祖母と孫の住む里山

 

 

 

祖母は読書しながら、孫は映画を観ながら。

それでもいつでも避難できるように準備をしつつ待機。

 

なぜか陽が差し込み、小鳥がチュンチュン言っている。

 

テレビや町内放送を気にしつつも、目の前にある現実と情報が合わなくて。

 

 

 

 

昼になっても来ない台風。

自転車並みの速度らしいよ、とスマホからの情報をそのまま祖母に伝える。

それなら、遅くて当たり前じゃあと笑う祖母。

自転車でここから四国まで行ってたら、そりゃ時間かかるわ、だって。

 

しまなみ街道を自転車(ママチャリ)で走った学生時代を思い出す。

ああ、確かに、きつかった……

ロードバイクなんて乗ったことのなかった孫が選んだママチャリ。

もし、しまなみ街道へ行かれる方がいたら、レンタサイクルで絶対ママチャリなんて選んじゃだめ。

 

 

 

「昔の台風はねえ」

 

 

 

自転車で瀬戸内海を超える思い出に浸っていた孫に、祖母が話しかけてきた。

 

「目の前に来て初めて、あー台風きよったかあってなりよったんで。ニュースもなんもなかったけえねえ」

 

テレビを見ながらいう祖母の目は、多分昔の風景を思い出しているところだった。

からしたら、祖母の家だって十分古い。

でも、祖母は、もっとずっと教科書に出てくるような家に住んでいた。

茅葺き屋根で、窓だってない。

 

 

「外と内の仕切りはの、今みたいにガラスじゃのうて、障子じゃったんで。障子が窓」

 

 

祖母の言葉から、前の職場でやった障子の張り替えを思い出す。

真っ白な紙を、障子の枠にくっつけるのが、結構楽しかった。

今は破れない紙を使うので、そんな簡単に破けない。

それでも、慣れない人が触るとすぐに残念なことになるから、そのたび心の中でちょっとしょぼくれた。

 

祖母が子どもの頃なんだから、使う紙はもちろん和紙だ。

和紙を作ってはいなかったそうだが、和紙の材料になる植物を育てていたそう。

「”こうど”ちゅう植物よ、こうど」

 

ネットで調べても「こうど」という植物は出てこない。

おそらく、「楮(こうぞ)」がなまったものではないかと思う。

 

 

「台風が来たら障子が全部破けるけえ、後に全部張り替えよったんよ」

 

 

 

 

それはもう……なんだか想像しただけで泣きそうな光景だと、孫は思った。

 

 

 

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