日常5 ひっくり返って。
祖母がこけた。
8年くらい前、庭でひっくり返って背骨を折って、
「どうしょーものぅなって思わず『おかあさーん』ち叫んどったよ。人間、どうしょーもなくなったらの、年も外聞もなくなるんじゃねえ」
そう言っていたのがとても印象的だった。
祖母が「おかあさーん」と叫んでいた頃、私は母と伊勢神宮へ行っていた。
二人とも神社仏閣好きなので、きゃっきゃきゃっきゃ楽しんでいた。
あの頃は、電話で祖母が転けたとか、背骨を折ったとか聞いてもぜんぜん不安にはならなかった。
この間、祖母が転けた。
お茶っ葉をつもうとしてひっくり返ったそう。
ハミ(蛇)を気にして足元しっかり見すぎてたんだとか。
何をどうしっかりしたら転けるんだ。
それでも、地面が草で、受け身をしっかり取れていたようだし、怪我もないし、何より本人がネタのように話すから、まあいいやと思った。
それに、今日は「おかあさーん」って叫んでないみたいだしね。
でも、今はやっぱり不安になる。
だから一緒に住むことにしたんだけどね。
たとえ転けても、見つけてあげられるように。
たとえ死んでも、その日のうちに見つけてあげられるように。
ちょっと今日はしょんぼり気分な日記になっちゃった。