おばばと暮らしてみた
白髪頭に、80度くらい曲がった背骨。
こんがり日に焼けた肌は、しわはあるけれどツヤッツヤ。
ただでさえ方言まみれの口調は、性格的な口の悪さもあり、外面のない家の中ではときどき結構な凄みがある。
それが、私の祖母。
御歳88(今年で89、でもこういうとまだ88じゃと怒る)である。
そんな祖母の1日は、まず布団の中で身体をほぐすことから始まるらしい。
布団で起きるための助走をつける。
それが大体15分から30分くらい。
私が目覚ましをかけて布団の中でグズグズするのと同じくらい。
それでも祖母にとってはそれさえも「歳のせい」なんだそう。
アラサーでそれをしている私はどうなんでしょうか。
朝食・昼食・夕飯、この人とにかく食べます。
朝はパン、昼は何かいつも適当にたべているそうで、夜は私担当。
とにかく米を食べます。
そしてそれぞれの食事の後に、ひと休憩。
30分ほど談笑したら40分ほどお昼寝。
腰が曲がって消化が苦しいのだそう。
それでも、この人食べます。
だから長生きしてくれているのかも。
そして仕事は畑。
草抜きを1日1時間必ずやっている。本人はこれが1番の趣味ら
しいので心底楽しんでやっている。押し車で歩く祖母が、くわを持った瞬間はものすごくかっこいい。
たねを蒔いて、必要なものには抜いた草を周りに布団のように被せてやる。日が沈むまで畑にいる。
ドキュメンタリー映画のようなキラキラした風景はない。
そこら中に虫はいるし(ちなみに今はムカデを毎日踏んで処理している)、朝晩と日中の寒暖差は5月下旬までストーブを常備しておかないといけない、商店なんて近場にはないし、街灯だってない。
現実に田舎で暮らすって、ものすごく「強い」と私は思う。
畑は次に何を植えるか、いつも自分の過去の日記から計算している。田んぼの苗をいつ買ったか、いつ植えたか、なんてもことも教科書は全部過去自分。
88年生きてきた祖母の顔は、深いしわが刻まれていて。それでも本当にすごくきれいな肌をしている。なんというか、しわをとても綺麗だと思う。
笑った顔も、しかめっ面も、イライラしている顔も、ものすごく迫力があるのだ。
怒ると怖い、でも笑うと本当に可愛い。
朝ドラみたいな戦前も知っている。
飛行機から銃を突きつけられる戦争も、経験している。
珈琲が飲めるような生活に憧れた時代を生きてきて。
80まで車に乗って、自分から区切りをつけた。
いろんな人を看取ったこの家で、自分もここで死ねたら良いのにと、言っていた。
別に偉大な人物でもない。
ものすごく平凡なおばあちゃん。
住んでいるのは、街灯さえない田舎で、趣味は草抜き。
そんな、おばばと暮らしてみた日記です。